No.34 「伝えて、説得する」=「支配」vs「伝えて、待つ」=「支援」

コラムNo.33で相手に伝わるタイミングまで伝える側がコントロールすることはできないとお話しましたが、タイミングまで合わせることはできなくても、「伝える」ことの意味はあるのです。
 例えば、こんな経験はありませんか?ある日突然自分の子供や姉妹が「テレビで○○が言ってたんだけど、『そっかぁ、なるほど』と思ったんだよね」と真顔で話しているのを聞いて、「それって私が何度も言っていたことじゃない!」と思ったことはありませんか?子供や姉妹は偶然見ていたアニメやドラマでこちらが何度も伝えていたことを目や耳にして、何故かその時は心に届いた(「伝わった」)ということでしょうか。
私にはこんな体験があります。彼氏が浮気していることを知った友人が、彼氏との婚約を解消しようかどうしようか迷って私に連絡してきたことがあります。数カ月の間に何度も電話をしてきて、時には夜中まで話を聴いたともありました。私がその友人のために婚約を解消するかどうするかの判断をするわけにはいきませんから、電話がある度に「あなたが自分を大切にすることが一番だし、あなたの判断であれば私はそれでいいと思う」と伝え続けました。友人は、何度も「別れる」か「結婚する」かの間で揺れ非常に苦しんでいましたが、ある日突然「私、やっぱり婚約を解消して別れることにした!」とかなり吹っ切れた声で報告がありました。彼女の説明によると彼女がその選択に至った理由は、「今日久しぶりに買い物に出かけて、ショッピングセンターの一角にある占いボックスが気になって彼とのことを占ってもらったら、占い師に『あなたの彼は自分のことしか考えていない人なので、あなたは自分を大切にした方がいい』と言われて、『自分を大切にしよう』と思ったら別れる決心がついた」とのことでした。報告を受けた私の正直な気持ちは、彼女が自分で判断し次に踏み出すことができたという嬉しさと、「同じことを私はずっと伝えてきたつもりなんだけど、私の言葉は彼女の心に届かず、見ず知らずの占い師の言葉が決定打になったんだぁ」と、なんとも複雑な心境だったのを今でも覚えています。
現在カウンセラーとして「人の人生の一時に寄り添う」ことが役割の仕事をしていると、このような経験の連続ですが、だからと言って複雑な心境に陥ることはありません。それは、相手の頭の中で情報がつながるタイミングをこちらがコントロールできないという事実を受け入れているからです。相手のタイミングはコントロールできませんが、いつか情報がつながる時が来ると信じることはできます。その時のために今情報を提供しておくことに意味があるのです。伝えたその時に伝わらなくても理解されなくてもいいことが多々あります。物事と向き合ったり受け入れたりするタイミングは、本人にしか選べません。周りにできることは、その時が来たときに情報が結びつきやすくなるようにあきらめずに何度も繰り返し伝えることなのです。
カウンセラーとして被害者支援に関わっていると「○○さんが言っていたことを聞いて、ボヤッキーさんも以前同じことを言っていたなぁと思いました」や「あの時ボヤッキーさんが言っていたことが今分かる気がします」と言われることは少なくありません。事前に情報提供していたので彼女たちの頭の中で情報がつながるのが早くなっていることもあるかもしれません。私はよく「今はなかなか理解したり受け止めることは難しいかもしれないけれど、いつどこでこの情報(見方・考え方)があなたの頭の中でつながるか分からないから、その時のために今から伝えておきますね」と言ってから、伝えることもよくあります。
相手の頭の中で情報がつながるタイミングまで何とかしようとすると、相手を「支配(コントロール)」することになります。その時こちらが与えられる情報を提供し、相手にその情報が意味をなす瞬間が訪れるまでただ見守る(待つ)ことが、相手の力を信じて寄り添うという意味で「支援(サポート)」と言えるかもしれません。