No.30 「個人」と「問題」を分ける(1)

これまで意思の疎通をスムーズにするためのコツとして、「意思の疎通の妨害になる言葉や言い回しを避ける」「『受け止める』というプロセスを入れる」「アイ・メッセージを使って伝える」ことを紹介してきました。自分が伝えたいメッセージに相手がより耳を傾けやすくするためのもう一つのポイントが、「『個人』と『問題』を分ける」という意識を持つことです。「個人」とは、相手の性格や資質やクセなどの行動パターンのことを指します。「問題」とは、問題となっている事象のことです。

例えば、職場の自分の席から自分が苦手な同僚のAさんが目に入り、Aさんのデスクの汚さや頭を掻いてフケを机に落とす癖が気になり仕事に集中できません。Aさんを注意しない上司にまで腹が立ってきます。Aさんは年上で勤務年数でも先輩なので机の上を整理整頓しきれいにするように注意することも難しく、ましてや頭を掻く行為を止めてほしいとはとても言える雰囲気ではありません。

ここで「個人」に注目してしまうと、Aさんの「だらしなさを何とかしたい」「頭を掻いてフケを落とす癖を止めさせたい」など、その人の性格や行動パターンに注目することになります。Aさんに机の上をきれいにする気もなければ、頭を掻く癖を止める意思もないとすると、あなたがAさんの行動パターンを変えることは至難の業です。たとえ勇気をもってAさんを注意したところで、一時的に改善されてもまた元の状態に戻ってしまうのが関の山です。最悪のケースでは、注意したことでAさんとの関係が悪くなり仕事がしにくくなることさえあります。そして、結局Aさんの行為が気になって仕事に集中できない状況が続きます。

このように「個人」に着目してしまうと本人に変わる意思がなければ、こちらとしてコントロールできる範囲は非常に狭くなるため、二進も三進もいかなくなることがあります。そこで、「問題」の方に焦点を当てることが重要になります。この例題で「個人」に着目せず、「問題」に着目するとしたら「問題」は何になるでしょうか?

次回「問題」に焦点を当てた場合に何が違うのかについて解説します。それまでこの事象のどこに着目すると自分がコントロールできる範囲が増えるのか、どのように対処できるのかを考えてみてください。