No.29 アイ・メッセージ (6)

5回にわたって「アイ・メッセージ」の魅力についてお話ししてきましたが、なぜ「アイ・メッセージ」がコミュニケーションを円滑にするかは、実は非常にシンプルな人間心理とも言えます。「アイ・メッセージ」では、自分が感じていること、思っていること、考えていることを伝えることになります。それは、例えば「私は不安です」「私は悲しい」「私は嬉しい」など、感情を伝える要素です。感情を伝えるとは、自分の心から出てくるものを伝えることで、自分の心以外のことを説明したり、理論武装することとは違います。心で感じたことを伝える方がより分かりやすく、あなたの話を聞いている相手の心を動かす。または、より相手の共感脳を刺激します。

人は「感じた」ときにより意識に変化が見られます。その証拠に「感動」という言葉は辞書にありますが、「理動」という言葉はありません。人は「感じ」て「動く」のであり、「理屈」では「動かない」ということなのかもしれません。

しかしながら、日頃相手に分かってもらいたいという気持ちが強くなればなるほど説明が増え、論理性に意識が向き、本当に自分が何を感じているのか、何をしたいのか、伝える目的は何かが欠落してしまいがちです。人に「伝える」という行為は、自分が何を「感じ」「思い」「どうしたい」のかが分かっていなければ、伝えたいことを伝えられないどころか、伝える目的を見失ってしまうことさえあります。

コミュニケーションをとろうとするとき、それは「支配」でも「攻撃」でもないため、基本的にはポジティブなものが根底にあって何かを伝えようとしていることがほとんどです。ポジティブなものが根底にあるから、相手に伝わると言ってもいいでしょう。しかし、その根底にあるポジティブなものが何かを自分が知らなければ、相手に伝えることは難しいのです。

「アイ・メッセージ」は、その根底にあるポジティブなものを自分が認知し、それを相手に伝えるのにとても有効な方法です。人がポジティブなものに心(耳)を開くのは、非常にシンプルな心の動き(心理)であり、脳にいい刺激となるためコミュニケーションが円滑になることも頷けます。人間は感情を感じるようにつくられています。自分がまず感じ、そして相手に感じてもらう。「感動」がコミュニケーションの潤滑油なのです。相手に伝える前に自分が何をどう「感じている」のかを見つめてみましょう。