No.25 アイ・メッセージ (2)

前回「アイ・メッセージ」の「アイ」には「eye(目)」と「I(私)」の両方の意味があることをお伝えし、「eye」の方を説明しました。今回は、「I(私)」についてお話します。

この「I」は、「私」を主語にして話すという意味です。普段私たちは「私」を主語にして話しているようで、意外にそうではないことが多いのです。「私」を主語にして話すとは、「私は~と思う(感じる・考える)」と表現することです。特に日本語は、主語を省略して話す言葉の文化を持っていることもあり、主語を意識して話すこと自体が難しいといえます。

そしてこのことは、アメリカでカウンセリングを実践したときと日本で実践したときの大きな違いでもありました。アメリカでは、大人になるにつれて「I」ではなく「YOU」を使って表現することを身につけます。あまり頻繁に「I」を使って話をすると幼稚な話し方に聞こえます。しかし、カウンセリング中は、自己洞察する機会なので、カウンセラーはクライアントによく「『I statement』(「I」を主語にして話すこと)で話してください」と伝えます。英語では、必ず主語を言うので、カウンセラーがこう一言伝えるだけでクライアントは「YOU」を「I」に置き換えて話し始めます。ところが、日本で同じアプローチをしてもなかなか上手くいきません。それは、普段日本語では主語を省くことが多く、「私」を主語に話しているのか「あなた」を主語にして話しているのか意識していない傾向があるからです。

自分では相手に伝えたいことを伝えているつもりでも、相手が耳を塞いでしまったり、相手に自分の気持ちがきちんと伝わっていないことがあります。それにはこの「アイ・メッセージ」が大きく関わっていることがあります。例えば、クライアントとこんなやり取りがよくあります。

クライアント「夫と話をしたいのに話す時間がないんです。」
カウンセラー「夫にそのことは伝えましたか?」
クライアント「はい。先日も夫に『忙しい、忙しいって、全然私の話を聞いてくれないじゃない!』と伝えたんですが、夫は不機嫌になって黙って部屋を出てしまい、結局話せていません。」
カウンセラー「夫と話をしていないことであなたはどう感じているのですか?」
クライアント「夫が忙しいことは分かっているのですが、子供の受験のこととか相談したいのに相談できていなくて、自分一人で考えていると不安で眠れないこともあるんです。」
カウンセラー「『不安で眠れない』ということは、夫に伝えたことはあるのですか?」
クライアント「そのことは言ったことはないです。」
カウンセラー「私にそれを伝えられるなら、そのことを夫に伝えてみてはどうかと思うのですが、いかがですか?夫はあなたがどうして話をしたいと思っているのか知らないのかもしれませんよね。」
クライアント「あぁ~、なるほど。そうですよね。」

このように、カウンセラーには自分がどう感じているかを言っても、伝えるべき相手に伝えていないことがあります。次回はこのアイ・メッセージのトリックについてもう少し詳しく説明します。