No.3 カウンセリングとリスニングスキル – カウンセラーに何ができるのか?

「Non-Judgmentalな質問をする上でのキーポイント」
2回にわたり傾聴のテクニックとしてNon-Judgmental(クライアントや話の内容を批判したり決め付けたり、価値判断しない姿勢)についてお話しました。
前回クライアントの世界の外に価値基準を置かず(自分の価値基準に当てはめようとせず)、クライアントの世界の中で辻褄が合っていれば、その基準を尊重しながら話を聞くことが実はカウンセラーのストレスや葛藤を減らす効果にもつながるとお話しました。

しかし、実際にはこうした「無条件の肯定的尊重」を実行するのは非常に難しく、中には「カウンセラーの価値基準を当てはめないのであれば、アドバイスも難しいし、話を聞くだけでカウンセラーに何ができるのか?」と思われた方もいるかもしれません。そこで今回は、Non-Judgmentalな姿勢で傾聴する中でカウンセラーに何ができるのかについて話したいと思います。

カウンセラーは、自分の価値基準(何が正しく何が正しくないか)を持ち込まず、クライアントの世界の価値基準を尊重するならば、何に焦点を置いて傾聴すればいいのでしょうか?クライアントに共感しながら話を聞くこともとても大切なカウンセラーの役割ですが、カウンセラーはクライアントの鏡ではなく別人格です。
だからこそクライアントの話を客観的に聞くことも見ることもできます。この客観性こそがクライアントがひとりで悩み考えあぐねているときには得難いけれど、カウンセリングを通してクライアントが得られる産物とも言えるでしょう。しかし、この客観性をカウンセラーが「クライアントの考え方や行動は間違っている」「私だったらこう考えるのに、こうするのに」という判断基準になってしまっては、Non-Judgmentalではなくなってしまいます。

カウンセラーに求められる客観性とは、クライアントの話の中から基本的に次の4つを見つけ出すことだと私は信じています:①矛盾②極端な思考③思考パターン④行動パターン。これら4つの要素は、カウンセラーの価値基準を持ち込まずに、クライアントの世界を尊重する中で見つけられる要素です。

① 矛盾:カウンセラーは、クライアントの世界の中で辻褄があっていればその基準を尊重しますが、話の辻褄が合っていなければ、そこには何かしらの矛盾があるはずです。質問形式でその矛盾を指摘します。
例)「ごめんなさい。私がよく理解できていない点があるので確認したいのだけれど、さっきあなたは○○と言っていたけれど、今は××と言っていますよね。もう少し詳しく話してもらえませんか?」「私には今の話はさっきの話と矛盾しているように聞こえますが、あなたはどう思いますか?」「今あなたは悲しい話をしているのに笑っているけれど、なぜ笑ってしまったのかしら?」

② 極端な思考:クライアントの話の中で非常に極端だと感じる内容がある場合は、それを質問形式で指摘します。特にゼロか10かの発言や、「みんなが・・・」「絶対・・・」などの発言は極端な発言である可能性があるので注意して傾聴します。
例)「職場でみんなに○○と言われたと言っていたけれど、何人くらいの人に言われたのですか?」「友達がいないと言っていたけれど、あなたにとって友達とはどういう人を言うのかもう少し詳しく教えてもらえますか?」

③ 思考パターン:クライアントの考え方にパターンがある場合、特にそのパターンがクライアントの望まない結果を生み出す悪循環を引き起こしている可能性がある、または、「変わりたい」と思いながら実行することを止める原因になっている可能性がある場合は、カウンセラーが感じたままを伝えパターンについて質問します。
例)「これまで○回カウンセリングをしてきた中で私はあなたの考え方に△△△なパターンがあるように感じるのだけれど、自分ではどう思いますか?違っていたら違うと言ってくださいね。」

④ 行動パターン:実際にカウンセラーがクライアントを見て気が付いた行動パターンや、クライアントの話の中に出てくる行動パターンについて質問してみます。
例)「これまでのカウンセリングの中であなたが○○に関係する話をするときよく涙が目に浮かぶようだけれど、その涙はどういう涙なのかしら?」「私の印象では、あなたはよく△△するように感じるけれど、自分ではどう思いますか?」

 こうしたカウンセラーの客観性は、クライアント本人が気付いていないことを気付かせるきっかけになったり、本当はわかっているけれど認めたくないといった部分をカウンセラーの質問に答えながら言語化することで受け止め、受け入れる認知のプロセスにつながると考えています。
こうした質問には、もちろんカウンセラーのJudgmentalな要素は入りませんし、もちろんクライアントの答えに正解も不正解もありません。クライアントが質問についてどう感じ、どう解釈するかを引き出すことがカウンセラーの役割であり、その回答の正誤を判断することとは違います。