No.2 カウンセリングとリスニングスキル – カウンセラーの必要性

前回、傾聴のテクニックとしてNon-Judgmental(カウンセラーや相談を受ける人が、クライアントや話の内容について批判しない、または良し悪しを判断しない姿勢)であることの重要性についてお話しました。

今回は、Non-Judgmentalであることが、いかにカウンセラーがカウンセリングを通してのストレスや葛藤を少なくする要素になるかについてお話したいと思います。

クライアント中心療法(Client-Centered Counseling)の生みの親であるカール・ロジャースは、無条件の肯定的尊重または積極的受容(unconditional positive regard)をこのアプローチの重要要素のひとつとして挙げています。私は、この無条件の肯定的尊重/積極的受容はカウンセラーがNon-Judgmentalな姿勢でクライアントの話を聞くことと強く関係していると考えています。

前回Non-Judgmentalであるということは、クライアントの世界と判断と選択を尊重することであると話しましたが、例えば、パートナーに殴られて入院したDVサバイバーが、カウンセリングの後、最終的に加害者であるパートナーのいる家に戻る選択をしてもカウンセラーはその選択を尊重するということです。もし聞き手が家族や友人であれば多くの場合、「なぜ暴力を振るうパートナーのもとに帰るの?離婚した方がいいんじゃない。」と心配し、アドバイスするかもしれません。
しかし、このような場合私はカウンセラーとして、DVの概念を説明し、できる限りの情報を与え、考えられうる選択肢を示しますが、クライアントが与えられた情報を基に自分の置かれている状況を判断し何を最終的に選択するかについては、彼女の判断と選択を尊重します。クライアントが命を失う危険が高いと判断した場合を除き、「どうするべきだ/どうしたほうがいい」というアドバイスとなる言動は意識的にしません。それは、私がこうした言動をした時点でNon-Judgmentalではなくなるからです。

クライアントの多くは、カウンセラーがアドバイスしてくれることを期待してカウンセリングに来ますが、その時クライアントが持つ判断能力や選択能力を最大限に引き出すことに一緒に取り組むことがカウンセラーの役割であり、アドバイスすることはむしろクライアントをJudge(判断する/決め付ける)することになり、アドバイスはカウンセラーの主たる役割ではないと私は考えています。

また、カウンセラーがクライアントの世界と判断と選択を尊重できずに自分または一般的な基準や価値観に当てはめてクライアントの話に耳を傾けた途端に、カウンセラーはNon-Judgmentalな姿勢で話を聞くことが難しくなるばかりか、クライアントの価値基準と自分が正と信じる価値基準とのギャップに葛藤しストレスを感じます。カウンセラーがクライアントの話を聞く過程でクライアントの世界の外に価値基準を置いてしまうと無意識のうちにクライアントを説得しようとしたり、極端な場合クライアントの思考や行動をコントロールしようとするため、自分が信じる価値基準に合わせないクライアントに苛立ちや時には怒りさえ感じかねません。
こうしたカウンセラーとクライアントの間の価値基準のギャップを認識するプロセスは、クライアントだけでなくカウンセラーにとっても大きなストレスになります。

言い換えれば、カウンセラーが意識的に自分の基準や価値観でクライアントを判断しないようにすること=クライアントの世界を無条件で肯定的に受け止めることでこうしたストレスを減らすことができるわけです。
どんなに信じがたい話であってもクライアントの世界の中で辻褄が合っていれば、カウンセリングの過程でその話の内容の事実を確認する作業(カウンセラーが自分の価値基準と照合する作業)に焦点を置くよりも、どのようにクライアントの世界で辻褄が合っているのかに注目し、それを掘り下げることで、クライアントの世界を積極的に受容し尊重し、クライアント自身に焦点を当てて(Client-Centered)カウンセリングを進めることができるわけです。

信じがたい職場のいじめやセクハラが横行する中、カウンセラーがカウンセリングを提供する上でストレスを感じ疲弊しないためにも、クライアントに対して彼女の世界を尊重し、Non-Judgmentalであることは重要だと感じています。また、こうしたカウンセラーの姿勢が二次被害(セカンド・レイプ)を防ぐことにつながると信じています。