No.22 意思の疎通における葛藤をめぐる4つのパターン (3)

前回から相手の気持ちを「受け止める」という行為の効果について、「葛藤をめぐる4つのパターン」を例にお話しています。今回は、最後のパターン4について解説します。

意思の疎通における葛藤をめぐる4つのパターン:

  1. 相手の気持ちを受け止めて、行動も受け入れる
  2. 相手の気持ちを受け止めず、行動も受け入れない
  3. 相手の気持ちを受け止めず、行動は受け入れる
  4. 相手の気持ちを受け止めて、行動は受け入れない

前回と同じ上司Aが終業15分前になって部下Bに明日の昼休み後の幹部ミーティングに使う資料づくりを依頼したケースにおいて、パターン4の「相手の気持ちを受け止めて、行動は受け入れない」とはどういう状況をいうのでしょうか?

それは、部下Bが上司に対し「明日の午後一のミーティングに必要な資料でお急ぎなんですね。」と、まず上司Aが急いでいることへの理解を示し、上司Aの気持ちを受け止めます。上司Aは自分が言っていることを部下が理解していることを確認できたことで安心し、部下の話に耳を傾けやすくなります。
そこで、「実は、今日は大事な用事があってできれば残業をしないで帰りたいのですが、明日午後一のミーティングであれば、明日の朝一番に作業をすれば間に合います。明日の朝ちょっと早目にきて準備するということでもよろしいでしょうか?」と部下Bは自分の選択肢を提示し、その日は残業をせずに帰ります(行動は受け入れない)。

上司Aに対し、部下Bが共感を示し気持ちを受け止めたことで、上司Aに安心を与え、部下Bの話に耳を傾けやすい状態をつくり、部下Bが事情を説明して他の選択肢を提示しています。従って、互いに伝えたいことを伝え、我慢する要素が少ない分双方のストレスも軽減されます。部下Bが翌日依頼された仕事をきちんとこなせば、信頼関係の構築にもつながります。

このように相手の気持ちを「受け止める」作業を入れることで、自分の意見や選択肢、または「ノー」を伝えるチャンスをつくることができます。自分が相手の状況や心境を理解していることを示すことは、相手の気持ちを「受け止める」ことであり、「受け入れる」こととはかぎりません。自分の話に耳を傾けさせるチャンスをつくる方法として一度「気持ちを受け止める」作業を入れ、自分も伝えたいことを伝えることで、自分も相手も我慢しないコミュニケーションが可能になります。

ただし、常にパターン4の選択肢があるとはかぎりません。特に職場では、上司が部下に業務命令として指示した場合は、従うしかないこともあります。パターン4の選択肢は、その時々の自分の立ち位置や状況を冷静に判断して選択する必要があります。
「受け止める」=「受け入れる」と思い込んでいて、つい自分の主張を前面に押し出してしまったり、ただ拒絶してしまうと意思の疎通が図れないため、お互いに安心感が得られず信頼関係の構築が難しくなってしまうことは少なくありません。相手に安心感を与え、さらに自分が伝えたいことを伝えやすくする状態をつくるために、一度「相手の気持ちを受け止める」というクッションを入れるだけで、「肯定的な話し方」に近づくことができます。早速実践して効果を体感してみましょう。