No.19 「受け止める」ことと「受け入れる」ことは違う

このコラムのNo.7で共感は「いい人になる」ことではないとお話しました。「共感しなくてはいけない」と思うあまり、カウンセラーがイエスマンになってクライアントの言うことにただ同意し、クライアントの言うとおりまたは期待どおりの言動をしたのでは、カウンセラーがクライアントの目の前に座っている意味はありません。

カウンセラーは、クライアントの言っていることや考えていること、希望などを全て受け入れているわけではありません。カウンセラーの意識やスキルとして求められるのは、一度「受け止める」というクッションを入れるプロセスです。

「受け止める」ことと「受け入れる」ことは違います。この2つを混同してしまうと、強い葛藤が生まれ、抵抗や反発を誘発してしまうことがあります。「受け入れる」とは、相手に同意し、相手の期待にそったものを提供することです。

「受け入れなくては」と思ってしまうと、相手と意見や考えが違う場合、強制性を感じ、抵抗したくなります。抵抗すれば、当然相手は安心を得られず、会話する気持ちが失せ、あなたの話にも耳を塞ぎたくなります。しかし、受け入れなくても「受け止める」に留めるだけでコミュニケーションを円滑にできることは少なくありません。

「受け止める」とは、相手が伝えようとしていることについて理解を示すことで同意することではありません。理解することが難しい場合は、「理解しようとしている」という姿勢を表現することです。理解を示すことは、同意することではありません。受け入れなくても(同意しなくても)受け止める(理解を示す)だけで相手に安心感を与えることができます。相手に安心感を与え、相手があなたの話に耳を傾けてもいいかなぁと思わせるチャンスをつくることがコミュニケーションをスムーズにするのです。

相手の話に違和感を感じているにもかかわらず、「そうですね」とただ肯定するのは、共感ではなく、「ウソ」です。しかし、「それは違うと思います。私は~と思います」と言ってしまうと、相手は「私のことを理解してくれない」と感じ、不安や不信感から会話が断絶される可能性が高くなります。一度「受け止める」とは、例えば、「なるほど。そういう考え方もあるかもしれませんね。」「あなたが~と思った(感じた)ということですね。」「~という理解でいいですか?」など、「私はあなたが言っていることは分かります」という表現を入れることです。

「受け止める」というクッションを入れた後、「あなたの考え方と少し違うかもしれませんが、お話を聞いていて、私は~と思いました」などと自分の意見を伝えると、肯定もされていませんが、強く否定されたように感じるリスクを下げることができます。

相手と自分の価値観や意見などが違っても頭から否定するのではなく、一度「受け止める」というクッションを入れるだけで、コミュニケーションにおける葛藤により発生するストレスを互いに下げることができます。「受け止める」ことと「受け入れる」ことは違うことを意識すると、相手の気持ちを受け止めやすくなり、相手に安心感を与えるコミュニケーションにつなげやすくなります。カウンセラーは、相手の気持ちを受け止める名キャッチャーといえるかもしれませんね。そういえば、ボヤキのノムさん(野村監督)もかつて名キャッチャーだったよねぇ~。