No.16 妨害になる言葉(1)

カウンセラーがクライアントと言葉を交わすとき、意識する要素のひとつは、言葉のチョイスと言い回しです。
言葉のチョイスをちょっと間違えただけで信頼関係にヒビが入ったり、特にネガティブな言い回しでなかったとしても、言い回しによって相手に及ぼす影響はさまざまです。しかし、こうした言葉や言い回しの影響力を知っておくことは、カウンセラーとクライアントという関係に限らず普段のコミュニケーションでも役立てられる知識でもあります。
ここでは、意思疎通の弊害になる言葉について取り上げてみましょう。

次の例文の中で耳にひっかかる言葉、または反発心を誘発したり、感情をエスカレートさせてしまう言葉を丸で囲んでみてください。

例文:「また靴を脱ぎっぱなしにしてぇ~。いつもこうなんだからぁ~。一回注意して直ったことなんて一度もないじゃない。常にだらしないから、学校でも職場でも怒られてばかりで、信用されないのよ。あなたみたいな性格じゃぁ、そのうちみんな相手にしてくれなくなっちゃうわよ。注意すればすぐにむくれるし、目つきも悪いしね。今の職場でも周りの人が絶対に迷惑してるわよ。これで解雇でもされたら、二度と正社員の仕事なんて見つからないわよ。そんなんじゃぁ、会社から見放されても当然だけどね。」

上の例文の中で使うと意思疎通の妨害になる言葉は、大きく次の3つに分類されます。
①    反発心を誘発する言葉・・・「いつも」「一度も~ない」「常に」
②    相手の感情をエスカレートさせる言葉・・・「みんな」「絶対に」「二度と」「当然」
③    相手を傷つけるだけで指摘しても仕方がない言葉・・・「目つきも悪い」

①の「いつも」「常に」という言葉は、勝手な決めつけであり、人間性全体を否定する言葉であるため、反発や抵抗を誘発します。例えば、子どもの頃、親に「いつも靴をぬぎっぱなしてぇ~」と注意され、「『いつも』じゃないよぉ~」と言い返した経験はありませんか。このように全体的に否定する言葉を使うと、本来「靴をしまう」ことが問題であったはずなのに、言われた相手は「いつも」という言葉に囚われてしまい、「いつもかいつもではないか」に問題の焦点がずれてしまいます。そのため、本当に伝えたいことが伝わり難くなってしまうのです。

②の「絶対に」「二度と」という言葉は、非現実的で不必要に強調する表現であるために、相手の感情を逆撫でし、エスカレートさせてしまいます。「もうあなたとは二度と会わない」と言って3日後にばったり遭ってしまうこともありますよね。「絶対に」や「二度と」という言葉は非現実的な表現であり、不必要に強調するあまり、強調しても逆に伝わらなくなってしまうことがあります。

③は、身体的なことで本人の努力では変えることが難しく、指摘しても相手を傷つけるだけで建設的な解決に結びつきにくい事柄です。「言っても仕方のないこと」を言う目的は何かが問題です。

①、②、③のような言葉や表現は、強調することで相手に印象づけようとつい使ってしまいがちですが、“不必要な”強調は、相手の意識を“不必要な”方向に引っ張る作用があるため逆効果ともいえます。こうした言葉を普段から使わないことから始めてみてもいいかもしれませんね。