No.13 相談者に考えさせ、認知と意識につなげる質問スキル 

「聞き上手」になるとは、「質問上手」になることかもしれません。しかし、意識して聞き手に徹しているつもりが、いつの間にか自分が「答える側」になっているという経験はありませんか?

私がアメリカでカウンセリング修士を取得して日本に帰国し、日本でカウンセリングを始めたときに気づいた「アメリカと日本の違い」のひとつがこの“トリック”です。

アメリカでは、クライアントは自分の意見を言うときに「私は~と感じた/思った」と言い切るか、“I”(私)以外の主語で表現する傾向があります[例:”It was out of control”(それは、コントロールできない状態でした)、”He made me angry”(彼が私を怒らせた)など]。

自分の意見を言うときに後者の言い回しを頻繁に使うクライアントには、”I statement”(「私は」を主語にして話す話し方)を使うように促し、自分の「感じたこと」「考えたこと」「思ったこと」として自分の発言に責任を持ち、「自分の意見・感覚」としての認知を働きかけます。

一方日本でよく見られるパターンは、自分の意見を言うときに最後“?”(疑問形)に摩り替えてしまう話し方です。例えば、長い時間自分の会社への不満や問題を説明して、最後に「私の会社ってひどいでしょう?」「こんな会社っておかしいじゃないですかぁ~?!」と自分の意見を言っているのに、聞き手に最後の判断を委ねる話し方をする人は少なくありません。

相手がこのような話し方をすると、聞き手はつい「そうね、ひどい会社ね」と答えたくなります。しかし、これが“トリック”なのです。自分の意見であれば、話し手は「私はこの会社はひどいと思うんです」と言い切ればいいのです。ところが、特に話し手の自尊感情が低くなっているときなどは、聞き手に断言させることで「自分の感じていることは正しい」と確認しようとする傾向があります。

聞き手は、共感していることを示すために「それはひどい会社ね」と答えてしまいがちですが、答えたことで「会社がひどいかひどくないか」の判断の責任を負うことになります。場合によっては、聞き手が「ひどい会社ね」と答えた途端に、散々会社の悪口を言っておきながら「やっぱりひどい会社ですよねぇ~」と落ち込んでしまう人もいます。自分以外の誰かが先にJudge(ジャッジ:判断)してくれたことへの安心感と反発が共存している象徴的な例です。

私がこの“トリック”を頻繁に使うクライアントに用いる手法は、「質問には質問で返す」という方法です。例えば、先ほどの例で言えば「それは、あなたがあなたの会社はおかしいと感じているということですか?」と聞き返します。するとほとんどの場合「おかしいと思います」と自分の意見として言い切ります。中には、このパターンを5回目のセッションまで繰り返すクライアントもいます。

そのような場合には、クライアントに自分の意見を言うときに“?”がついていることを指摘し、その都度私が「質問に質問で返している」こと、そしてなぜ私がそのような対応をしているのかを説明して、次から“?”をつけず言い切ることを促し、行動パターンの意識化を図ります。すると、次からクライアント本人が自分の意見に“?”をつけたとき、そのことに気づき、私が質問で聞き返す前に自分から「言い切り型」に言い直すようになります。そうなると行動パターンの意識化はかなり進んだと言えます。

「質問上手」とは、いかに答えず「質問で返すか」ということも含まれるのかもしれません。