No.10 カウンセリングとリスニングスキル

早いものでこのコラムも10回目を迎えました。これまで、傾聴について「Non-Judgmental」「同情と共感の違い」「傾聴する上で注目するポイント」「アドバイスと情報提供の違い」などについてお話してきました。

「聞く」という行為は私たちが日常的に行っていますが、「聴く」という作業は、10回に渡って“ボヤく”程、瞬時にそして同時に多くの能力が必要とされる複雑な作業とも言えます。一言で「傾聴」(active listening)と言っても、高い意識や質問のテクニックが求められ、カウンセリングの基本中の基本と言われながら、実はとても深く、難しい課題であると日々のクライアントとのやり取りの中で痛感しています。

そして最近、この「傾聴」に関して特にカウンセラーとして必要な能力が「信じる力」だと感じています。「自分」そして「クライアントの力」を「信じる力」です。現在では当然となっている傾聴スキルを理論化したカール・ロジャースも「人間は元来信頼に足るものであり、自分自身を理解し、自分で問題を解決できる大きな可能性を持っている」ことを前提に理論を構築しています。

クライアントの中に「よりよい生活や人生を求める力」や「何かを達成する力」「自分で判断し選択する力」「解決する力」があるとカウンセラーが信じることができて初めて、クライアントの世界を尊重し、クライアント自身の力で一歩一歩進んでいくプロセスを時間がかかっても一緒に取り組むことができるのだと思います。このクライアントが持っている力を信じることができないと、ついアドバイスをしてしまったり、先回りして代弁してしまったり、選択や解決を誘導してしまったりするのかもしれません。「傾聴」を双方のエンパワメントにつなげるためには、「信じる力」が不可欠だと考えています。

クライアント本人が自分自身を信じる力が弱くなり自己尊重心が低くなっているときに、カウンセラーがクライアントの力を信じなければ、誰が信じるのでしょうか?カウンセラーがクライアントの力を信じることで、クライアントが自分自身を信じる力を引き出しやすくするともロジャースは説いています。
またクライアントが持つ力を信じることで、カウンセラーもカウンセリング後もずっとクライアントのことを考え続けたりせず、ストレスを最小限に抑えることができるのかもしれません。「信じる者は救われる」などという宗教上の教えがありますが、信じるものが神ではなくても、信じることで「楽になれる」ことは多いのかもしれません。

カウンセリングアプローチを通して、人間の無限の可能性を前提に「信じる」ことから生まれる産物として「平和」を示唆し導いたロジャースが、ノーベル平和賞にノミネートされたことが今になって理解できた気がします。
しかしながら、カウンセラーも人間ですから全ての事柄に共感し理解することは不可能です。無限の可能性を信じることも重要ですが、自分が対応できる限界を知り、扱う内容によってはバウンダリー(境界)を設けることも大切なプロフェッショナリティと言えます。

傾聴に関してはこの辺にして、次回から質問形式などカウンセラーが発信する上で必要なテクニックや意識、カウンセリングプロセス、エンパワメントにつなげる支援やより具体的な問題ひとつひとつへの対応のポイントなどについて共有できればと考えています。