No.8 カウンセリングとリスニングスキル – カウンセラーの役割

私のところにカウンセリングを希望して初めてコンタクトしてくる人の中には、「私にはこの問題をどうしていいのか分からないので、アドバイスがほしい」とおっしゃる方が少なくありません。では、カウンセラーの主な役割は「アドバイザー」なのでしょうか?

私はカウンセラーの主な役割は、クライアントの持つ判断能力や選択能力、解決能力を引き出しエンパワーすることだと考えています。確かにカウンセラーも全くアドバイスをしないわけではありませんが、アドバイスをする時は「適切なアドバイス」に限り、むしろ「情報提供」としての提示をより多く意識的に行います。「アドバイス」と「情報提供」は違います。
傾聴のプロセスにおいてNon-Judgmentalであることが重要であると以前にお話ししましたが、カウンセラーは善悪や正誤の判断を主な役割とする“裁判官”ではありません。クライアント自身が自分で善悪や正誤を判断できるよう持っている能力を引き出すことにカウンセラーとしての大きな役割があります。そうすると、善悪や正誤を判断することが役割でないカウンセラーがアドバイスをするということは、一種の矛盾ともいえます。

広辞苑には、「アドバイス=助言、忠告、勧告」とあり、助言・忠告・勧告は、自分の価値基準で「良い」と判断したものを与える(勧める)行為です。言い換えれば、相手の言動や行為が「良い」と思えないから、アドバイスという形で助けようとします。従って、「~した方がいい」「~するべきだ」と相手に伝えることは、「あなたは間違っている」というメッセージに聞こえる可能性があります。例えば、アドバイスがほしいと思って家族や友人に相談して、却ってアドバイスされたことで批判・非難されたような気持ちになり、「アドバイスなんていらないから、ただ話を聞いてほしかっただけなのにぃ~!」と感じた経験はありませんか?アドバイスすることがJudgeになり、相手を傷つけてしまうことがあるのです。

反対に「情報提供」は選択肢のひとつとして、情報や考えを提示するわけですから批判や非難のニュアンスを最小限にして、相手が受け止めやすい形で提示することができます。「こういう選択肢もあるように思えるけれど、あなたはどう思う?」「私はあなたの話を聴いていてこう感じたけれど、あなたはどう?」「選択肢のひとつとして、こういう機関もあるけれど、どうしたいですか?」など、何をすることが良いか悪いかという強制力を感じさせる提示(=アドバイス)ではなく、「あくまでも選択するのはあなたですよ」というメッセージにすることが、「情報提供」という形で提示する重要さでもあります。

また、「アドバイス」は、上からものを言われているように感じ、さらに相談する側と相談される側の力関係が開いてしまう可能性があります。エスカレートすると、クライアントによっては、カウンセラーへの過度な依存に発展する危険性もあります。しかし、「情報提供」であれば、一緒に集めた情報をもとに考えを整理し、判断や選択のプロセスを共に歩む上で、相談する側の力関係への意識や依存心を最小限に留めることが可能です。「アドバイス」の最大の落とし穴は、クライアントがカウンセラーのアドバイスどおりに行動し、期待と違う結果を得た時に、アドバイスしたカウンセラーに責任を転嫁しやすくすることです。特に自己尊重心が低下し、自分に自信がないクライアントは、さらなる自己否定につながる行動を避けようとするのは自然な自己防衛作用でしょう。

クライアントの判断能力や選択能力を引き出しエンパワーすることがカウンセラーの役割でありながら、クライアントが自分の選択に責任を持ちづらくする「アドバイス」は、クライアントのディスエンパワメントにつながるかもしれません。カウンセラーがアドバイスをする時は「“適切な”アドバイスに限る」とは、つまり「クライアントが自分のアドバイスどおりにした結果については、どんな結果であってもカウンセラー自身が責任を取れると思えるアドバイス」に限るということでもあるのです。