No.6 カウンセリングとリスニングスキル – 共感とは?

カウンセリングの世界では、“共感”という言葉をよく聞きますが、“共感”とは一体何でしょうか?また、なぜ“同情”ではなく、“共感”なのでしょうか?
私は、カウンセリングで求められている“共感”を「クライアントの立場になって感じ、理解し、その感覚と経験を共有し、一緒に歩く(取り組む)こと」と解釈しています。ある事象について一緒に(共に)感じるという作業は、言い換えれば、クライアントの世界(感覚)を尊重することでもあります。

それに対して”同情“は、「クライアントの問題を何とかしてあげたい」という”情“であり、感覚の共有=共感という対等に近い関係というよりむしろカウンセラーが上位となる目線から、カウンセラーとクライアントの力関係が強調される可能性が高くなります。
従って”同情“は、「助けてあげたい」⇒「アドバイス」⇒「クライアントの責任を請け負う」という構図を生み出しやすくしてしまうのです。カウンセラーとクライアントの関係においては、この「ついアドバイスしたくなる」という”情“が、”同情“の落とし穴でもあります。

カウンセラーがクライアントに同情し、アドバイスしがちな関係性を作り出してしまうと、クライアントの依存心や期待を増長してしまう可能性があります。そして、クライアントがカウンセラーのアドバイスに従って行動した結果、期待した結果が得られなかった場合、クライアントはその結果の責任を一体誰に求めるのでしょうか?
それがどんなに最終的にクライアントが選択したことであったとしても、心や意志の強さを失っているクライアントが、アドバイスしたカウンセラーに責任を転嫁しやすくします。

共感に留めておくことで、一緒に取り組む姿勢を維持し、上から目線でアドバイスしてしまうリスクを免れることができるのです。カウンセラーは、クライアントが安心して肩の荷を降ろせる機会と環境を提供しても、荷物の責任まで負わないことが重要です。カウンセリングが終わったら、クライアントは置いた荷物をちゃんとまた肩に乗せて帰らなければいけません。

また、クライアントの抱える問題をカウンセラーも経験したことがあるケースについては、クライアントに同情してしまうと、クライアントの問題がいつの間にかカウンセラー自身の問題に摩り替わってしまい、クライアントの話を傾聴する上で、カウンセラーの感情の振れが大きくなりやすく、精神的疲労を増大させてしまうことがあります。だからこそ、同情せず、共感に留めることが重要です。
また、共感とは「感じる」ことですが、カウンセラーが共感したことを言葉で表現しなければ、クライアントはカウンセラーがどれくらい共感しているか認識できません。「共感」できても、この「共感を言葉にする」作業は非常に難しく、「共感しなくては!」と気負うあまりクライアントとの感覚のズレを怖がり、カウンセラーの中には感じたままを言葉にすることに慎重になりすぎたり、躊躇してしまう人もいます。しかし、100%共感することは非現実的ですし、こうしたズレはクライアントが「自分のことをもっと理解してほしい」⇒「もっと具体的に詳細を話そう」という動機につながることもあるので、こうしたズレを怖がるのではなく、ズレも実は傾聴(相手に話させる)のプロセスにおいて役立つ道具と考えると楽になります。一口に“共感”といっても非常に深く、共感を表現するにはそれなりの経験とスキルを必要とすることもあります。